座席を取り外しても車検に通る?交通規則や保険の観点から解説
「車中泊のため後部座席を取り外したけれど、そのまま車検に通るか心配」「使わない3列シートを外したままで車検に出せるのか?」といった疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
車検では、本来ついているはずの座席を取り外したままでは不合格となります。さらに、座席だけでなくヘッドレストの取り外しも、席によって装着が指示される可能性があります。
本記事では車検を受けるにあたって知っておきたい座席とヘッドレストの取り外しについて、注意点をご紹介します。
1.座席の取り外しは車検に合格できる?
車検の際、座席を取り外した状態では不合格になってしまいます。その理由は、本来自動車の車種ごとに決まっている乗車定員数に対して座席が不足しており、定員が乗車できる場所を確保していない車だと見なされるためです。
自動車検査証(車検証)には「乗車定員」という項目があります。何人が乗車して走行可能な車であるかを表しており、定員分の座席が記載されています。車検は車検証に記載されている情報とその車両の状態が合っているのかを点検するものであり、座席の数が足りなければ乗車定員を満たしていないと見なされ、車検に合格できません。
例えば、3列目シートを取り外した状態であれば、本来は7人乗りの自動車であっても、定員は4名だと判断されてしまいます。反対に、本来4人乗り、5人乗りの自動車に対して座席を増やしているケースも不合格となります。
特に近年はキャンプブームで車中泊をする方も増えており、寝るスペースを確保するため後部座席を取り外していることも珍しくありません。また、子どもが通学で使っている自転車を後部座席へ乗せるために普段は座席を取り外しているという方もいます。うっかり座席を外したまま、車検を受けてしまい不合格になったという事態を防ぐためにも、車検の前は座席を購入時の状態に戻しておきましょう。
なお、車両の構造変更手続きをすると乗車定員を変更できます。もし常時後部座席を外したままの状態で使用する車であれば、変更手続きをすることで座席を外したままでも車検に合格できます。
2.座席を取り外して公道を走るのは違反?
座席を外していると車検に合格できませんが、取り外したまま走行する場合には罰則はないのでしょうか。
結論からいうと、座席を取り外して公道を走行しても違法だと規定する明確な法律はありません。しかし、場合によっては違反に該当することもあるため、次の点に注意しましょう。
不正改造や整備不良になる?
座席の取り外しそのものを違反とする法律はありません。自動車の不正改造や整備不良にも該当しません。整備不良の扱いとなるのは以下のような改造です。
- 尾灯類の色が指定以外のものになっている。
- 速度抑制装置(スピードリミッター)の解除や取り外しをしている。
- 運転席・助手席窓ガラスへの着色フィルムの貼り付け
- タイヤ・ホイールの車体外へのはみ出し
- マフラーの切断・取り外し
- 前面ガラスへの装飾板の取り付け
参考:安全な車社会のために
特に尾灯のランプの色は、赤色、白色、橙色の3色とすることが明確に義務付けられています。例えばブレーキランプなどで使われる尾灯は赤色である必要があり、白色などの別カラーのランプに変わっていると不正改造になります。電球が切れており、うまく点灯しない状態も整備不良の扱いです。スピードリミッターの取り外しや解除も不正改造や整備不良に該当します。
座席で気をつけたいのは、本来座席があったところに座席がない状態のまま、人が座って走行した場合です。この場合は「安全運転義務違反」となります。安全に走行するため、乗車している方は全員座席に座るようにしましょう。
やむを得ず座席を外す場合
どうしても座席を外す場合は、そのまま外すのではなく、必ず構造等変更検査の申請をしましょう。購入時の状態に対して以下のような変更を加える際には、保安基準へ適合するよう届け出する必要があります。
- 大幅な車体などのサイズ変更
- 乗車定数の変更(座席の増減)
- 排気量アップ
- エンジン換装
車好きの方にとって、性能向上や外装、内装のドレスアップは楽しみの一つといえるでしょう。しかし、通常の保安基準に適合しないような大幅な変更を加える際は必ず構造等変更検査の申請をしましょう。
申請書は、運輸支局に自動車検査証(車検証)と点検整備記録簿などと一緒に提出します。書類審査に無事合格すれば、早ければ一週間ほどで車を車検場に持ち込み車検を受けることになります。この検査に合格すると「公認車検車」として座席を取り外した状態でも車検をクリアできます。
3.座席を取り外すことで事故の際に保険が適用されないことも
座席を取り外した状態で万が一事故を起こしてしまった場合、加入している任意保険は適用されない可能性が非常に高くなります。なぜなら、任意保険はあくまで契約した時の自動車の状態であることを前提としているためです。座席が外されている車、つまり規定の乗車定員を満たしていない車は、補償の対象外になってしまうのです。
座席を取り外した状態で保険を適用させたい場合は、前述の構造変更の届出が必須です。そのうえで保険会社に構造変更の連絡をし、対応方法を相談しましょう。
4.座席のヘッドレストを取り外す場合も注意
ヘッドレストとは、シート上部に設置されている頭を置くパーツのことです。正式名称を「頭部後傾抑止装置」といいます。頭を休めるためのパーツだと思われやすいですが、交通事故の衝撃で頭が後ろに急激に倒れ過ぎないようにするためにガードし、むち打ちなど首のケガを予防するのがその本来の役割です。
ヘッドレストは、頭にフィットするように角度や高さを調節することでさらに安定した使い方ができます。後ろの様子が見えにくいからといって、外したままでいると車検で不合格になってしまうだけでなく、事故の際のケガのリスクも高まってしまいます。
ヘッドレストの保安基準
ヘッドレストを装着していても車検で不合格になってしまうケースがあります。ヘッドレストの保安基準は次のとおりです。
| 車検で不合格になるケース | 車検で合格するケース |
|---|---|
|
|
運転席および助手席は、保安基準によってヘッドレストの装着が義務付けられています。ただし後部座席は規定がなく、ヘッドレストをつけていなくても検査対象外です。
実際に販売されている自動車の中でも、後部座席にヘッドレストを装着していない車種が多く存在します。ただし、後部座席にヘッドレストがあるにも関わらず、外した部分の穴が明確にわかる状態だと車検に通らないリスクがあります。車検に出す際はヘッドレストがある座席にはすべて装着した状態で検査を受けましょう。ヘッドレストカバーやクッションは無理に取り外す必要はありません。
最近車に導入する方が増えているモニター付きヘッドレストは、後部座席に乗った方が事故の際にモニターにぶつかり、その衝撃でケガをするリスクが高いとして、車検では不合格となります。モニター付きヘッドレストにカバーをつけたとしても車検には通らないため注意しましょう。
後部座席にモニターを設置したい場合は、ヘッドレストにモニターアームや紐で結ぶ独立タイプがおすすめです。ヘッドレストとモニターが完全に分離できるものであれば、すぐに取り外しができるため通常のヘッドレストとみなされます。
ヘッドレストがないと車検に合格できない
ヘッドレストは頭部や首の安全を守る役割を持った重要なパーツのため、運転席および助手席のヘッドレストがないと、車検に合格できません。
ただし、車の新車登録の時期によってヘッドレストが必要になる座席は異なります。平成24年6月30日までに登録した車は運転席のヘッドレストが必須です。それ以降の平成24年7月1日以降に登録された自動車であれば、運転席だけでなく助手席にもヘッドレストの装着が必要となります。
車検を行う際、座席には装着していないもののヘッドレストが車内にある状態なら問題ないのではと考える方もいます。事実、ヘッドレストがきちんと車内にあれば問題なく車検に合格することもあれば、装着を指示されることもあるようです。
ただし、あくまでもヘッドレストは事故の際に安全を守る大切なパーツであり、装着が義務付けられているものです。車検の際はヘッドレストを装着し、購入時の状態にできるだけ近づけるようにすることが大切です。
ヘッドレストがないと違反になる
そもそも、ヘッドレストを取り外して公道を運転することは法律違反に該当します。「道路運送車両の保安基準第22条4号」の違反となり、具体的な罰則はないものの、保安基準に適合していない自動車として厳重注意を受けてしまいます。さらに、ヘッドレスト未装着の状態で走行中に事故を起こしてしまった場合、整備不良車として任意保険が下りない可能性も高まります。
座席の取り外しが車検証にある定員数と異なるため保険の対象外になってしまうことと同じように、ヘッドレストを外した状態の車も車検時とは異なる車両とみなされます。運転者だけでなく助手席に同乗している方のケガについても、治療費などの補填がゼロになってしまう可能性もあります。運転時は必ずヘッドレストを装着しましょう。もしヘッドレストを紛失してしまったら、いち早くディーラーや販売店に相談するなどして新しいヘッドレストを用意しましょう。
5.まとめ
座席やヘッドレストの取り外しが車検にどう影響するか、またその危険性や法律上の扱いなどをご紹介してきました。大切なことは、車検の際にはできる限り新車当時の車内の状態に戻しておくことです。
WECARSは、全メーカー・全車種を取り扱っておりますので、座席の設置や整備不良など、事前のご相談もお気兼ねなくお申し付け下さい。お客さまのカーライフの安全・安心に最大限配慮した検査・整備体制でお車をお預かりします。車検を検討される際は、ぜひ無料見積りからお気軽にご相談ください。



